本年度は、競技スポ-ツに積極的に参加している者とそうでない者とのエゴグラムからみた自我状態の変化についての縦断的比較、および試合前後のエゴグラムからみた自我状態の変化についての問題に焦点をあて検討を試みた。また、本年度は、この研究課題の最終年にあたるため、その取りまとめ、および今後の問題を指摘することにした。 競技スポ-ツに積極的に参加している者とそうでない者とのエゴグラムからみた自我状態の変化についての縦断的比較においては、競技スポ-ツへの積極的参加の有無、発達的な視点などの側面による検討の結果、あまり大きな変化はみられないようであった。また、試合前後のエゴグラムからみた自我状態の変化についての比較においては、特に能力の低い者にとっては、試合になるとFC(自由な子供の自我状態)よりAC(順応した子供の自我状態)の得点が高くなる傾向を示した。 一昨年からの研究を総括してみると、競争的なスポ-ツは、青年期のスポ-ツ実施者の自我にストレスとも考えられるような影響を与えている可能性があることが推察される思われる。また、特に能力の低い者、あるいは試合の前などでは、かなりの程度でスポ-ツ実施者の自我状態に影響を与えているものと思われる。 今後は、エゴグラムが本人の自我状態が視覚化できるという特徴を有していることから、自己の性格特徴への気づき、そして修正、さらには自己実現を促進させる心理的コンディショニングの問題にも検討を加えてゆきたいと考えている。また、現在、尺度化されているエゴグラムは、日常場面を問題としたものである。スポ-ツにおいては、日常場面とは異なった、あるいは特有な問題も少なからずあると思われるので、スポ-ツ場面を想定したエゴグラムの尺度開発が必要ではないかと考えられる。
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