インターαトリプシン インヒビター(ITI)は7種類のヒト血漿プロテアーゼ 阻害子の一つである。本研究では、ITIの精製法を確立し、トリプシンとの反応機構を解析すると共に、ITIの基本構造を明らかにすることが出来た。 1)ITIの精製法:ヒト血漿に塩化バリウムを添加し、凝固系の因子を除去した後、Q-セファロース、DEAE-セファセル、最後にヘパリン-セファロースを用いたクロマトグラフィーににより、ITIを精製した。この方法では、血漿1リットルから約50mgのITIが得られる。 2)トリプシンとの反応機構:ITIにトリプシンを添加していくと、ITI-トリプシン複合体が生成するが、トリプシンが過剰になると、この複合体が切断され、最終的に45kDaの複合体が生成した。この複合体にα2-マクログロブリンを添加すると、トリプシンがα2-マクログロブリンに転移した。 3)ITIの基本構造:ITIはSDS-ゲル電気泳動では、還元、非還元のいずれにおいても、210kDaの一本鎖構造を示すが、阻害活性のある140kDa鎖と不活性な70kDa鎖がS-S結合以外の相互作用力を介して接続した構造をしている。ITIを濃縮すると、一部はこの2本鎖に解離する。140kDa鎖はさらに阻害活性ドメインである25kDa鎖と100kDa鎖とからなり、両者はヒアルロニダーゼ感受生の糖鎖(20kDa)を介して結合している。ITIをpH12にすると、この3本鎖単位分かれた。これらから推定される基本構造を図に示した。
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