研究概要 |
1 組織形成細胞における糖鎖構造の解析一雄ラット脳, 肺, 肝臓, 腎臓, 脾臓, 筋肉の各組織に於けるアスパラギン結合糖鎖構造を解析した. この結果, 各臓器には高マンノース型や複合型2本鎖糖鎖が主として見出されたが, 特に脳と腎臓では複合型3, 4本鎖の含量も高かった. 一方, シアル酸, フコース, α-ガラクトース, bisecting N-アセチルグルコサミン, N-アセチルラクトサミン含量に, 各臓器間で著しい差が見出された. 臓器間で見出された糖鎖構造の違いは, 各臓器を構成する細胞群の多様性による可能性も考えられる. 更に各臓器には高マンノース型糖鎖が多く, これらが細胞内膜系糖蛋白質に由来している可能性も検討する余地がある. 又, ムチン型糖鎖は絶対的存在量が少なく, 解析に至っていない. 2.腹水肝癌細胞の糖鎖構造の解析-ラットA.7974, AH414細胞の粗細胞膜画分のアスパラギン結合糖鎖は, 正常肝に較べ分岐化した複合型3, 4本鎖の増加が見られた. 更に細胞間接着の見られない自由型AH414細胞の方が, 細胞同士が接着し島形成型のAH7974細胞に較べ, 複合型3, 4本鎖により多くのシアル酸が結合している事や, 更にN-アセチルラクトサミンを含む糖鎖が多い傾向が見出された. 又, 高密度WGA-Sepharaseカラムを用い, ムチン型糖鎖構造を解析中である. 3.正常肝, 腹水肝癌細胞の糖転移酵素活性の比較-これ迄の知見に基づき, 正常肝, AH7974, AH414細胞のホモジェネートを酵素源とし, アスパラギン結合糖鎖のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc-)残基とムチン型糖鎖のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc-)残基へのガラクトース転移酵素活性を測定した. 両腹水肝癌細胞は正常肝に較べ, GlcNAc-へは約2倍の, しかしGalNAc-へはAH7974で1.5倍, AH414で3倍の活性上昇が観察された. 今後正常肝, 肝癌, 両腹水肝癌細胞を用い, これらの糖転移酵素活性の上昇とムチン型, アスパラギン結合型糖鎖の相対量を検討し, 細胞の癌化, 脱組織化と糖鎖構造の変化を明らかにしてゆく.
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