研究概要 |
1.ラット正常肝、腹水肝癌の細胞膜糖蛋白質のAsn結合糖鎖の構造解析-他の臓器同様、正常肝の糖鎖は複合型2本鎖、高マンノース型糖鎖が主体であるのに対し、腹水肝癌の糖鎖は複合型3本鎖、4本鎖の高分岐化糖鎖とこれらにN-アセチルラクトサミンの繰り返し構造をもつ糖鎖であり、典型的な糖鎖の癌性変化を示す結果であった。しかし、細胞間接着が消失したAH414細胞にはフコシル化混成型糖鎖が特徴的に見出され、全体の37%を占めた。この糖鎖は細胞間接着が認められるAH7974細胞で14%、全ての細胞が接着をしている肝細胞で6%であった。この事から、細胞間接着の消失と、細胞膜糖蛋白質糖鎖として混成型糖鎖の発現が相関すると考えられる。又、糖鎖生合成機序の面から、混成型糖鎖は高マンノース型から生じ、α-mannosidaseIIの作用を経て複合型へ移行するので、混成型、複合型糖鎖を主体とするAH414細胞では、α-mannosidaseIIの作用する系としない系が存在し、しない系の経路がこの細胞で拡張していると推定される。2.細胞膜ムチン型糖蛋白質及びその糖鎖構造の解析-シアル酸残基を標識した膜糖蛋白質を、低密度WGAカラムで選択的にムチン型糖蛋白質を分画すると、AH414細胞で全標識糖蛋白質の35%がAH7974細胞で19%が、正常肝7%がカラムに結合した。このWGA結合シアロ糖蛋白質はアルカリ処理で糖鎖を遊離する事、又、プロナーゼ消化後もBio-GelP-10カラムでvoidに溶出される事から、この糖蛋白質はペプチド骨格に、ケチン型糖鎖が密に結合していると推定された。ムチン型糖鎖の構造解析をCarlson法又はAmamo法で標識した糖鎖を用いて行うと、GalNAcot,Galβl→GalNAcot,Galβl→(GlcNAcβl→)GalNAcotと推定され、その約60%がシアル酸を含む賛成糖鎖であった。これ以外に高分子の糖鎖も存在したが、微量で解析に至っていない。以上の所見から、細胞間接着の消失と細胞膜糖蛋白質糖鎖の混成型化及び高密度シアリルムチン型糖鎖の発現が相関すると思われる。
|