ガングリオシドが活性調節に関与するタンパクリン酸化酵素系の解析を行った。その概要を以下にまとめる。 1.ガングリオシド依存生タンパクリン酸化酵素の精製と構造・機能の解析:ヒト由来神経芽腫瘍細胞(GOTO)の形質膜画分に存在する本酵素活性を解析した。(a)本酵素活性はNP-40が安定かつ高収率で可溶化でき、(b)可溶化された本酵素活性はPhenyl-5PWによる疎水性クロマトグラフィーを行なうことにより、比活性で見る限り、20〜50倍精製された。これにより活性はCa^<2+>依存型と非依存型二つに分離された。今後、両活性をそれぞれられに精製し、酵素の構造と機能を解明するとともに相互の関連を明らかにしなければならない。また、(c)本酵素のラット脳からの抽出精製法を検討し、上記Ca^<2+>非依存型と同等と考えられる酵素に関して検討したが、まだ満足すべき所まで到達してはいない。さらに検討を加える必要がある。 2.ecto-型のガングリオシド依存性タンパクリン酸化酵素活性の解析:GOTO細胞のecto-型タンパクリン酸化酵素活性の中で、少なくとも三種のタンパク質のリン酸化がGQ_<1b>に特異的に促進された。GQ_<1b>の至適濃度は5-10nMであった。また、GQ_<1b>の糖鎖部分により阻害される傾向があだん。ガングリオシドの特異性とその至適濃度並びに糖鎖部分による阻害傾向は、この細胞株に対するガングリオシドによる神経突起伸展作用のそれと極めてよく似ていた。さらに、このリン酸化を阻害する化合物は何れもGQ_<1b>による神経突起伸展作用をも阻害することから、それぞれいずれかの因果関係があるものと考えられる。このecto-型の酵素分子が同細胞株の形質膜画分に見られたCa^<2+>依存型あるいは非依存型の活性を示す酵素分子と同じものなのか否かも今後検討しなければならない。
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