腎臓抽出液をホルチ分配により脱脂したところ赤血級凝集活性が著しく低下した。このことからレクチンの活性発現にはリン脂質も必要であることが示唆された。これを証明するために、従来用いられてきた赤血球凝集試験に代わる方法として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識化した糖タンパク質を用いる新しい活性測定法を開発した。即ちレクチンをニトロセルロース膜にスポット後、順次BSAによるブロック、リン脂質PEの添加再構成、及びHRP標識化糖タンパク質との結合を行い、ジアミノベンシジンの発色により判定した。この方法により脱脂腎臓抽出液を調べたところ、PEで再構成するとはじめてシアロ糖タンパクとの強い結合が認められた。従って昨年度報告した精製時におけるレクチン活性の低下や消失は、活性に必要なリン脂質の除去によるものであると説明できた。更に脱脂腎臓抽出液をC_<18>疏水カラムにかけ、硫安濃度をIMから段階的に下げて疏水クロマトグラフィーを行ったところ、腎レクチンの1つが生理食塩水溶出画分に回収された。この画分中にはSDS-PAGEで複数のタンパクバンドが示され、これらをニトロセルロース膜に対してウェスタンブロットした後、上記の活性測定を行ったところ、31kDaタンパク質がシアル酸特異的レクチンであることが明らかとなった。また、このタンパクはPEばかりでなくPC、PI、PSなどのリン脂質でも再構成され活性が増強された。このことは、シアル酸の認識にはこれらリン脂質の極性頭部の荷電が直接関与しているわけではないことを示す。尚この31kDaタンパクはHRP-標識化レクチンによる染色試験により、O-グリコシド結合型糖鎖をもつ糖タンパク質であること、クロマトフォーカシングから等電点は約7であること、タンパク質の一次構造においてはアミノ末端がブロックされていることなどが明らかになった。
|