これまでの研究結果からプロテアーゼインヒビターとアミラーゼインヒビターが互いに相同であり、共通の祖先蛋白より進化してきた可能性を示したが、両酵素を同時に阻害するインヒビターの存在は、それぞれ別個の祖先蛋白の遺伝子が融合したことを示唆している。我々はそのドメイン構造を明確にするため、オオムギトリプシンインヒビターについて、そのジスルフィド結合の位置決定を試みた。インヒビター蛋白自身がプロテアーゼ抵抗性であり、まず臭化シアンで部分分解後ゲル濾過しシスチン含有ペプチドを我々が開発した水素化ホウ素ナトリウム還元後の呈色反応で検出し単離陸した。更にトリプシン等のの酵素で消化後、高速液体クロマトでペプチドを分画、同じ試料を過蟻酸酸化したものと比較することで、シスチンペプチドの同定を容易にした。この結果分子内の5ケのジスルフィド結合のうち3個の同定を行った。そのうち1個は、C末端側のアミラーゼ阻害ドメインとN末端側のトリプシン阻害ドメインとを結合しており、両者の遺伝子が融合したとするとそれより以後に生成したものと考えられる。残りの2個はドメイン内に存在するとみなされ、2-ドメイン構造を支持している。 プロテアーゼインヒビターは基質アナログと考えられ、酵素阻害機構も考え易いが、アミラーゼと蛋白性のアミラーゼインヒビターとの相互作用については、いろいろな可能性が考慮される。例えば基質類似の糖鎖を結合し、これよる酵素との相互作用等である。この様に翻訳後のアミノ酸の修飾は、その蛋白の機能と密接に関連するため、この種の修飾アミノ酸の検出法の確立は重要な課題である。我々はアミノ酸自動分析装置を改造し、強酸性アミノ酸誘導体の分析を容易にするシステムを開発し、本研究にも応用した。
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