凝集、放出及び血餅収縮反応などの血小板の生物機能は細胞の収縮力という形で発現する。その中心的調節機序は収縮蛋白質ミオシンのカルシウム・カルモデュリン依存性ミオシン軽鎖キナーゼによるリン酸化反応である可能性が報告されている。最近、我々はミオシン軽鎖キナーゼ以外にCキナーゼによってもミオシン軽鎖がリン酸化されること及びそのミオシン軽鎖リン酸化反応がミオシン分子に与える効果はミオシン軽鎖キナーゼによる場合と異ること(実際にはTPA刺激血小板の場合)を報告した。そこで申請書はこの分子量2万のミオシン軽鎖のリン酸化反応に注目して研究した結果以下のことが明らかとなった。まず、トロンビン刺激血小板のミオシン軽鎖はリン酸化の程度で3つの状態が存在することが判明した。つまり、リン酸化されていない型、1分子のミオシン軽鎖に1分子のリン酸が転移した型と2分子転移した型の三種類のタイプを2種類の電気泳動(ウレアゲル電気泳動法、二次元電気泳動法)により検出した。更にこの1分子リン酸化されたミオシン軽鎖と2分子リン酸化されたミオシン軽鎖について、トリプシンにて限定分解した後、二次元薄層クロマトグラフィーによるペプチドマップを作成し、検討したところ、そのリン酸化反応はミオシン軽鎖キナーゼとCキナーゼの両方によってミオシン軽鎖の異なる部位がリン酸化されていることが判明した。細胞内Cキナーゼの活性化とカルシウムイオンの動員が各々TPA刺激とカルシウムイオノフォア刺激によって起すことが出来る。申請者はTPAやカルシウムイオノファアによる刺激によっても2分子リン酸化反応がおこるかどうか検討したところ、TPA刺激血小板ではCキナーゼとミオシン軽鎖キナーゼの両者によって、又カルシウムイオノフォア刺激血小板ではミオシン軽鎖キナーゼのみによって触媒されていることが明らかとなりミオシン軽鎖リン酸化反応の分子レベルでの解析が進んだ。
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