本年度は、昭和62年度にイケチョウガイ卵のアセトン粉末より得たウロン酸含有糖脂質認識レクチンおよびウサギにこのレクチンを免疫して調製した抗レクチン抗体を用いて受精阻害効果を調べた。 イケチョウガイの受精実験に関しては現在のところ確立化された方法がないようなので、精子にウロン酸含有糖脂質を有し、しかも受精実験方法が確立化されている海産二枚貝のムラサキイガイ(Mytilus edulis)を用いて、レクチンなどによる受精阻害実験を行った(ムラサキイガイ精子におけるウロン含有糖脂質の存在に関しては抗ウロン含有糖脂質抗体を使ってあらかじめ調べてある)。 貝柱を切断して、30V20秒間の電気ショックを施した後、海水に浸して放卵・放精子させ、卵・精子共成熟していることを確認した。受精阻害実験は阻害剤として上述のレクチン、抗ウロン含有糖脂質抗体および抗レクチン抗体(海水で希釈した溶液:0.5ml)を用いて、受精に必要な充分量の卵および精子を含む溶液(卵:1.0ml 精子:0.5ml)と混合し、プラスチックシャーレー中、23℃で行った(レクチンおよび抗ウロン酸含有糖脂質抗体は精子と5分間、抗レクチン抗体は卵と5分間プレインキュベートした後、それぞれ卵溶液および精子溶液に加える)。経時的に一定量を採取して受精の進行度を観察すると共に、2時間後の第一分裂(2細胞胚)時に計数を行った。 その結果、コントロール(阻害剤を含んでいないもので、正常発生する)と比較して阻害剤を添加したものにはいずれも受精阻害が認められた。とくに、レクチンでは受精阻害が顕著であった。
|