研究概要 |
1.ハブ(奄美)毒凝固酵素フラボキソビンの一次構造の決定 ハブ毒より, フィブリノーゲンに作用し, フィブリノペプチドAを遊離し凝固させる凝固酵素を精製し, フラボキソビン(flavoxobin)と命名した. S-ピリジルエチル化フラボキソビンを化学的及び酵素的に断片化し, 得られたペプチド類のアミノ酸配列を液相及び気相エドマン法により解析し, 236個のアミノ酸残基よりなるフラボキソビンの全アミノ酸配列を決定した. クロストリパインによる断片化がオーバーラッピングを検討するのに有効であった. Bothrops atroxからの凝固酵素であるバトロキソビンの配列とは69%の相同性を示したが, ウシトロンビン及びウシトリプシンのそれらとは30%程度の相同性を与えるに過ぎなかった. 糖を含まず, 活性セリン残基の周りの配列が, セリンプロテアーゼ類の共通配列とは異っていることがわかった. 2.ハブ毒プロテアーゼF_1の分子的性質と一次構造の決定. プロテアーゼF_1は, フィブリノーゲンAα鎖を, 特定の結合で切断し, 分子量約58,000のフラグメントにする塩基性酵素として精製された. 原子吸光分析により, 亜鉛1原子を含むことがわかった. S-ピリジルエチル化プロテアーゼF_1を化学的及び酵素的に断片化して得られたペプチド類のアミノ酸配列を検討することにより, 122残基よりなるこの酵素の全アミノ酸配列を決定した. この一次構造は, 先に一次構造を決定したホスホリパーゼA_2と残基数が同じで, 55%の相同性を示すことがわかった. この酵素のホスホリパーゼA_2活性は, ホスホリパーゼA_2の0.5%であった. この酵素は二機能性酵素であることが明らかとなり, 名稱の変更が必要となった. 3.cDNAの塩基配列からのアミノ酸配列の決定. 項目1及び2の研究のために, 遅延しているが, ハブ毒腺組織20個を採取した. 63年度に実施する.
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