研究概要 |
(1)XII因子の異常分子の構造解析: 患者血漿よりモノクローナルヒトXII因子抗体セファロースカラムを用いて, 異常XII因子を精製した. 異常XII因子をトリプシン処理後, DEAE-セファロースカラムを用いてβ-XIIaを調整した. これを還元ピリジルエチル化後, トリプシン消化を行い, 逆相系高速液体クロマトグラフィーを用いてペプチドマップを作成し, 正常のものと比較した結果, ペプチドT12´の溶出位置が異なっていた. これのアミノ酸分析および配列分析の結果, Cys-571がSerに置換していることが判明した. この異常XII因子は, トリプシンによりβ-XIIaにまで切断をうけるものの, DFPをとりこまず, プレカリクレイン活性化能も示さなかった. したがって, XII因子のCys-571(キモトリプシン番号ではCys-220に対応する)は, 活性中心残基の立体構造を保持する上で, 極めて重要であると考えられた. (2)フィブリノーゲン名古屋Iの構造解析: フィブリノーゲン名古屋Iは, 重合障害を示す異常分子であり, SDS-PAGEより2鎖に異常が認められたので, ピリジェチル化γ鎖をCNBrで切断し, さらにリシルエンドペプチダーゼ消化を行なった. そして正常γ鎖と比較した結果, 異常ペプチドCN6K2´を得た. これのアミノ酸分析および配列分析の結果, Gln-329がArgに置換していることが判明した. これまで, フィブリノーゲンのDドメイン内の重合部位はγ鎖356よりカルボキシル末端側にあるといわれていた. フィブリノーゲン名古屋Iでアミノ酸置換が生じていたGln-329はこの領域内には位置せず, DangらやVaradiらが報告しているカルシウム結合部位内に位置していた.
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