研究概要 |
リソゾームマトリックスに存在する酸性加水分解酵素の局在化には, 酵素の高マンノース型糖鎖にリン酸化が起り, 生成したマンノースー6-Pがsorting signalとなり, リセプターと結合してリソゾームへ輸送されるという説が出されている. しかしながら, リソゾーム膜に存在する糖蛋白質でこれまで明らかにされたものは, すべて複合型の糖鎖を有し, マンノースー6-Pが形成される可能性はほとんど否定されている. 又, ツニカマイシン存在下で生合成されるリソゾーム膜糖蛋白質ガリソゾーム膜に局在化する事実からもリソゾーム膜糖蛋白質の局在化には糖鎖は不要であることが判明し, リソゾーム膜糖蛋白質の局在化には, マトリックス酸性加水分解酵素とは全く異なる分子機構が働いている可能性が強くなった. 本研究ではリソゾーム膜糖蛋白質の局在化に必須なSorting Signalは蛋白質部分, とくにそのプロ部分に存在すると推定し, 当研究室ですでに精製が完了し, それに対する家兎抗血清も調整されている, 主要なシアロ糖蛋白質(Major Sialo glycoprotein:MSGP)のクローニングを本研究の目的の一つとした. クローニングにはRat LiverのcDNAをλgt11のlac区遺伝子部分にクローニングしたライブラリィを使用して, MSGPの特異抗体で, MSGPとβ-Galactosidaseのfusion proteinの検出による方法で, λgt11のスクリーニングを行った. このスクリーニングに於て, 陽性のλgt11を数個得た. これらのλgt11よりDNAを調整し, EcoRIで消化し挿入DNAのSizeを検討したところ最も大きなもので700baseであった. MSGPのin vitroでのtranslation productは42kであることより, 本DNAはMSGPの全遺伝子領域を含んでいない可能性が高いので, 現在700baseのDNAをprobeとして, full lengthを有するクローンのクローニングを行なっていると同時にこの700baseのDNAのsequencingも行なっている.
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