研究概要 |
ラット網膜内ホスファチジルイノシトール4, 52リン酸(PIP_2)の動態の解析を, PIP_2に対するウサギ抗血清を用いて行なった. その結果 (1)明順応した捍体外節膜中のPIP_2は殆んど認められなかったが暗順応外節中のPIP_2は抗血清により強く染色された. (2)捍体外節中のPIP_2量は僅か1ミリ秒のフラッシュ光により減少した. (3)このように急減少した網膜中PIP_2量は, 暗順応操作により徐々に回復することが判った. そして5分間の暗順応で, 完全暗順応レベルにまで回復することが確かめられた. (4)暗順応した網膜にいろいろな強度の光を照射することにより, 捍体外節中のPIP_2の量は, 光量に依存して減少した. この減少の度合は, ブリーチしたロドプレンの量と完全に相関することが判かった. (5)このような結果から以下のような結論が導かれる 即ち a)ラット網膜中のPIP_2は光照射により急速に分解する b)このPIP_2は暗黒中で速やかに再生する c)PIP_2の分解はロドプレンのブリーチングによりトリガーされる. 以上の結果はCell Structure and Function に発表された. この抗血清を他の組織にも適用し, PIP_2の動態の解析を行なった. 即ち (1)ラットレンズを免疫組織化学的に検索した結果, 線稚状構造にはPIP_2が認められなかったものの上皮清造には認められた. この結果PIP_2は老化にも関係することが示唆された. (2)ラット腎臓, トリ錐体, ヒト捍体中にもPIP_2の局在部位を見出した. この部位の同立は来年度にも引き続き行う. なお, この抗血清はIP_3とは反応しなかった. またほとんどがIgMであった.
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