研究概要 |
Na^+, K^+-ATPase(酵素)の基本構造体(αβ-プロトマー, P)とその2量体((αβ)_2-ダイプロトマー, D)について比較し, 以下の結果が得られた. (1)ATPase活性について-C_<12>E_8と活性発現に必要なリガンド(ATP, Na^+, K^+, Mg^<2+>)の他に, 精製ホスファチジルセリン(60μg/ml)を含んだ溶出緩衝液でHPLCカラム(TSK-gel G3000SW)を平衡化し, そこに種々の量の可溶化酵素を負荷して, クロマトグラフィーを行い, 溶出する蛋白質成分の分子量とATPase活性を同時に測定した. 分子量は低角レーザー光散乱法, 活性は溶出液中のPi濃度測定で行った. 溶出した成分は, 負荷量に依らず常に1つで, その分子量は高負荷量時の22万から, 低負荷量時の15.8万へと連続的に変化した. これは, 可溶化酵素は2P【.dblbarw.】Dの解離・会合平衡系にあり, 低蛋白濃度でP状態で, 高濃度ではPとDの混合状態となることを示した. 一方, ATPase活性値は, 蛋白質負荷量に依存せず一定で, 膜結合型酵素の64%を示した. 従って, DとPの構造体間には, ATPase活性に差がないと結論した. (2)ATP結合-0.1M NaClと10μM^<14>C-ATPを含む溶出緩衝液を用い, 上記のカラムを使ったHummel-Dreyerの方法でATPの結合を測定した. Dに大して1.5で, Pに1.3molATP/1.5×10^5g蛋白質の結合量で, 有意な差はなかった. (3)カチオン結合-同じ手法で^<204>Tl^+の結合を測定した. DとPへの結合量は, 4μMTl^+でそれぞれ1.1と0, 16μMTl^+で1.9と1.2mol/1.5×10^5g蛋白質であった. DとP間に, Tl^+に対する親和性の差が認められた. 以上の結果は, PとDの間には, Tl^+結合に対する親和性以外に差は認められず, Pが機能の最小構造単位であることを示した. しかし, (1)で得られた解離曲線の蛋白質濃度依存性は, 膜ではD以上のオリゴマー構造で存在することを示した.
|