1.ヒト赤血球膜からの新しい補体活性制御蛋白の構造解析 昨年度、補体膜攻撃複合体(MAC)形成阻害活性をもつ蛋白をヒト赤血球膜から単離に成功したことを報告し、本蛋白をP18と仮命名した。しかしP18はヒト赤血球膜をあらかじめパパイン処理しておかねば精製できず、P18はパパイン処理で生成したフラグメントの可能性があった。そこで本年度は、抗P18抗体との反応性を目安として未処理赤血球膜からの精製を試みた。P18精製法にさらにいくつかの改良を加えて活性蛋白の単離に成功し、正式に膜攻撃複合体形成阻害因子(MACIF)と命名した。以後はMACIFを用いて、すべての構造解析を行なった。まずN系アミノ酸配列を17残基決定できた。その配列をデータベース検索したところ、同一配列を示すものはないので、MACIFは新しい蛋白であることが確認された。Nーグリカナーゼ処理するとSDSーPAGE上での分子量が約18000から12000へと減少したことから、Nーグリコシド糖鎖をもつ。一方Oーグリコシド糖鎖はないように思える。MACIFはFACS分析によって白血球表面にも存在することが確認され、また白血球のPIーPLC処理によって消失することから、ホスファチジルイノシシトール糖鎖(PI)結合型膜蛋白と思われた。発作性夜間血色素尿症(PNH)患者の赤血球・白血球での欠損があることからもMACIFがPI型であることは間違いない。現在得られた部分アミノ酸配列からオリゴヌクレオチドプローブを合成し、ヒト血液細胞CDNAライブラリイーからのクローニングを試みており、すでに有望なクローンを得ている。 2.ヒト尿DAFと赤血球膜DAFの構造比較 昨年度、ヒト尿から二種のDAF(DAFーU1とDAFーU2と命名)を精製できたが、本年度はさらに大量に調製し、両者の構造を解析中である。N末部は膜DAFと同じだが、C末部がかなり異なることを推定させる。
|