研究概要 |
本年度の研究の目的はウサギ肺クマロファージのホスホリパーゼに関し, 細胞内での本酵素の局在性, 基質特異性について基礎的な検討を行なう事にあった. その結果, 次の点を明らかにする事が出来た. 1.ホスホリパーゼAの細胞内分布 肺マクロファージを超遠心法でミトコンドリア+リソゾーム画分, ミクロゾーム画分, 細胞質画分に分け, ホスホリパーゼAの活性を測定した所, いずれの画分とも活性が認められた. 一般的に哺乳類のホスホリパーゼAは膜結合酵素としても知られているが, 肺マクロファージではホスホリパーゼの70%は細胞質画分に存在しており, 細胞膜から遊離した形で存在している事が分った. 細胞質にはホスホリパーゼAの他, イノシトール型リン脂質を特異的に水解するホスホリパーゼC, 及びリゾホスホリパーゼの存在が確認された. ホスホリパーゼAの至適PHは9であり, Ca^<2+>によって活性の上昇が見られた. 2.基質特異性 細胞質に存在するホスホリパーゼAはコリン型, エタノールアミン型, イノシトール型のいずれのリン脂質をも水解した. 脂肪鎖の異なる1-16:0-2-(^<14>C)20_〓4GPC及び1-16:0-2-(^<14>C)-18:1GPCを用い, 基質特異性を検討した. Ca^<2+>の非存在下では顕著な水解の相違は見られないが, Ca^<2+>を添加すると20:4の水解は18:1に比較し, 著しく上昇する事が明らかとなった. 各リン脂質分子種の物理化学的性質に基づく相違を除外する為, 16:0-^<14>C-18:1 GPCを混合したリポソームを基質として, 同様な検討を行なった. 複数の基質を含むアッセイ系においても, 単独の基質を用いた場合と同様, Ca^<2+>添加によるリン脂質からの20:4の優先的な水解が見られた. この結果は, 細胞刺激→Ca^<2+>流入→20:4の遊離と言った活性化機構でのホスホリパーゼAの役割を知る上で重要な知見を提供出来るものと考えられる.
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