研究概要 |
コブラ属ヘビ神経毒のうち長鎖神経毒α-ブンガロトキシン対する単クローン抗体作製のため, 抗原となる毒素の精製を行なった. 250mgの粗毒を出発材料とし, 電気泳動的に均一なα-ブンガロトキシン10mgを得た. 精製したα-ブンガロトキシンを抗原とし, マウス(BALB/C)に免疫を行った. α-ブンガロトキシンは致死毒性をもつので, その投与量はLD50以下から始めML100にまで次第に増加させた. 免疫したマウス脾臓リンパ球とミエローマ細胞 (NS-1)とのハイブリドーマを作製した. ELISA法により抗α-ブンガロトキシン抗体の検出を行ない, 8株のハイブリドーマを選出し, そのうち細胞増殖性の良い2株を培地中で大量に増殖させた. 2株の産生する抗体のクラスをそれぞれIgG1およびIgMと同定した. ついで, これらの株の腹水化を試みIgG1産生株について腹水化に成功し, 単クローン抗体の精製を行なった. コブラ属ヘビ神経毒の内, 短鎖神経毒に対する単クローン抗体については既に報告されている. 一方, α-ブンガロトキシンを含め長鎖神経毒に対する単クローン抗体については未だ報告がない. 得られた単クローン抗体により認識されるエピトープ部位の決定は, α-ブンガロトキシンの限定分解フラグメントおよび合成ペプチドを用いて行なう. また, 核磁気共鳴法による測定には単クローン抗体を大量に必要とするので, 100mgを目標として抗体を作製中である. 今後, 認識部位の決定された単クローン抗体(Fabフラグメン)とα-ブンガロトキノあるいは合成フラグメントとの相互作用の様式を核磁気共鳴法により明らかにする. また, 長鎖および短鎖神経毒に対する免疫交差活性をもつ単クローン抗体の検索のため, 先行して腹水化したIgG1産生株以外のハイブリドーマの検討および短鎖神経毒(コブロトキシン)に対する単クローン抗体の作製も試みる.
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