本研究補助金採択の初期の段階に、ユーグレナにおいて我々が提唱した概日時計の分子モデルとは対立するような報告が出版された。ことの重大性のため、生物材料を、申請時の繊毛虫テトラヒメナから緑色鞭毛藻に変更することを余儀なくされた。 Lonergan (1986) は、ユーグレナの光合成リズムを制御する概日時計の中枢には、カルモジュリンが組みこまれていないと結論したのである。その根拠は、我々が示したカルモジュリン阻害剤W7によるパルスが細胞分裂リズムの位相シフトという事実とは異なり、同じパルスが光合成リズムの位相をシフトできなかった点にある。そこで、実験条件をできるだけLonergan (1986) のものと一緒にして、私は、W7パルスによるリズムの位相シフト効果が本当にないのかどうか実験した。その結果、細胞分裂リズムも、光合成リズムもW7パルスによって位相シフトすることを確認した。Lonergan (1986) の実験は、パルス直後の一時的な現象にすぎないことが判明した。概日時計本体と観察しているリズムとの連絡が一時的にはずれることはよくあることで、その時期をすぎ連絡が復してから測定すれば、リズムは位相シフトしていることが確認されたわけである。 一方、細胞分裂リズムの全自動測定システムの開発を試みた。詳細は様式1の報告書に譲るが、現段階で残されていることは、測定データのAD変換と、そのコンピューターへの入力系の開発である。副産物として、新しい概日リズムを発見した。すなわち、細胞形態変化の大きさは、光照射によって変化し、その変化率に概日リズムがあるのである。いいかえる、光誘導的形態変化は概日リズム的に変動する。
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