研究概要 |
多くのペプチドホルモンはC末がアミド化されており、この構造が生理活性の発現に必須である。C末アミド化に与る酵素として,Bradburyらは、D-Tyr-Val-Gly(d-MSHのC末アナログ)をD-Tyr-Val-M-I_2に転換する活性をブタ脳下垂体に見い出した。しかし多様なペプチドホルモンのアミド化に単一の酵素が与っているのか、それとも或る程度の基質特異性を もつ酵素群が機能しているのか明らかではなかった。そこで我々は、D-Tyr-Val-Glyの他に、D-Tyr-Asm-Gly及びD-Tyr-Leu-Gly(VIPのC末アナログ)を用い、ラットの脳、脳下垂体、腸のアミド化活性を検討した。これらの臓器には、3種の基質をそれに対応するアミドに転換する活性があること、更にkm値、至適pH及びdesamideVIP-glyによる阻害実験の結果から、脳、脳下垂体、腸には極めて性質の類似しているアミド化酵素が機能していることを明らかにした。 一方、我々はこの酵素がpH7とpH8,5の2点にpH optimumを持つことを見い出し、両pHに留意しつつラット脳から本酵素を部分精製した所、分子量36,000の蛋白がpH8,5に至適pHをもつアミド化酵素(pH8,5酵素)であること、このものに、それ自身ではほとんど活性のない分子量41,000の蛋白を加えると、中性pHにおける活性が招来されることを知った。即ち、粗酵素標品でみられた2点に至適pHをもつpH profileは、両蛋白が適当な比で存在している結果であると判断された。更にショ糖密度勾配遠心法によって、両蛋白とも分泌顆粒内に局在していることが知らされた。アミノド化反応の場である分泌顆粒は、pH5,5-6に保たれている。従って両蛋白の協同作用によって、アミド化反応が効率よく進行している可能性が示唆された。アミド化酵素の至適pHについては、なお議論のある所であり、我々の見い出した事実は、この問題の解決に手がかりを与えるものと思われる。
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