研究概要 |
我々は成鶏肝臓核よりモノ(ADP-リボース)転移酵素をフエニルセファロース, CM-セルロース, ゲル濾過, フエニル5PW, 及びモノSカラムクロマトグラフイーを行い単一標品にまで精製したが, 本酵素の精製途中すなはちセフアデックスG-75のゲル濾過ステップまで共に精製されてくる分子量3万3千(P33)のたんぱく質は酵素たんぱく質とかなり強固に結合しており, ADP-リボースの優れた受容体であることが見出された. したがって, 我々はフエニル5PW, 及びモノSカラムを用いた高速液体クロマトグラフイーでこのたんぱく質を電気泳動的に単一標品まで精製した. 本たんぱく質はそのアミノ酸組成より酸性たんぱく質(おそらくは非ヒストンたんぱく質)と考えられ, DNAと強固に結合するが, 精製ADP-リボース転移酵素を用いてADP-リボース化すると, DNAとの結合能がなくなることがわかった. 更に, 我々は精製P33たんぱく質, マウス脾細胞, 及びミエローマ細胞を用い体外免疫法によりモノクロナル抗体を作成することに成功したので, このモノクロナル抗体を酵素法(ラクトベルオキシダーゼ法)を用いて[^<125>I]でラベルレ, ラジオイムノアッセイにより成鶏肝臓の細胞内分布を, 又, 肝臓組織切片を作成し間接法により蛍光顕微鏡を用いて細胞内分布を検索したところ, 本たんぱく質は核に局在し, 特にクロマチンと結合して存在することが明らかとなった. この結果は以前に[^<32>P]NADを用いてin vitro で測定した酵素活性の細胞内分布, 更には[^<32>P]ADP-リボース化P33たんぱく質の細胞内分布の結果とよく一致していた. P33たんぱく質が核局在していること, 及びADP-リボース化するとDNAとの結合能が変わることにより本たんぱく質のADP-リボース化はクロマチンの構造の変化, 更には情報発現機構の調節に関係しているものと考えられた.
|