研究概要 |
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が単離した, Na/Kイオノホア抗生物質モネンシンに対する耐性株Mon^r-31は, インスリンやウィルスに対する応答が異なっていることを報告した. 本研究では, 低比重リポ蛋白(LDL)に対する受容応答を, Mon^r-31とCHOに於て対比させた. Mon^r-31ではLDLに対する受容体活性がCHOの1/3〜1/4に低下していたので, LDLレセプターの構造をその抗体を用いて解析することにした. その結果, 1.^<125>I-LDLの結合活性を調べたところレセプター数はCHOとMon^r-31では差がないが, 親和性が変化している. 2.Mon^r-31のレセプターはCHOに較べて分子量が減少している. 3.ヒトLDLレセプターのcDNAを導入したところ, そのレセプターの分子量もMon^r-31で減少している. 4.LDLレセプターのN-糖鎖構造は, CHOとMon^r-31間で著明な変化がみられなかった. 5.LDLレセプターのO-糖鎖をO-グリカナーゼ処理することによってCHOとMon^r-31間の分子量の差が消失した. 6.この分子量の両細胞株間の差は, 未成熟型では見られず, 成熟型のLDLレセプターにおいてのみ観察された. 以上の実験結果より, Mon^r-31においては, LDLレセプターが合成され, そのあとゴルジ装置で成熟する過程において変化を受けることが示唆された. 現在, この変化したO-糖鎖構造を詳細に解析するとともに, 細胞融合によって相補性グループを決定しつつある.
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