研究概要 |
マウスの下半身に9Gy, 11Gy, 13Gyの線量で, セシウム137ガンマ線を照射し, 照射後1〜10日にわたって回復過程を観察した. とくに11Gy, 13Gyの照射によってもマウスは死亡せず, 多くのクリプトが一たんは小腸上皮から消失するものの, 残ったクリプトが2つに縦列して増加していくことが判明した. これまでの予備実験からマウス小腸上皮の放射線感受性は1日の間で大きく変動する, つまり顕著なサーカディアンリズムを示すというデータを得ていた. 感受性細胞の同定と分離をおこなうに先立ち, この点に関して詳細な研究をする必要が生じた. そこで2つのタイプの細胞死つまり急性細胞死と増殖死を指標として, その日内変動を調べた. 0.14, 0.20, 0.50, 2.5, 9.0Gyの各線量の照射において, それぞれに急性細胞死の日内変動が認められた. 最高値と最低値は4倍もの開きがあり, 高感受性細胞の分離には最高値を示す午前9時ごろが最も適していることが判明した. 11Gy, 13Gyの照射後のクリプト幹細胞の増殖死についてもクリプト形成率を指標として日内変動を調べた. これらの日内変動がサーカディアンリズムに起因するものかどうかを研究する目的で, 昼夜の逆転した飼育条件下に移してからの変動パターンを追跡した. その結果, 急性細胞死を示す高感受性細胞群はサーカディアンリズムに従って変動していること, これに対し比較的低感受性のクリプト形成細胞群はエサ, 光条件によって容易に変動することが判った. マウスの小腸上皮から解剖顕微鏡下でクリプトを分離する技術を現在確立しつつある. これにより大量のクリプトをマウス小腸より, 大量に集められる. また, 比較的技術の確立しているマウス胸腺を用いて高感受性細胞群(死細胞)を生細胞から分離, 分析する技術を習得中である.
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