マウスの下半身に9Gy、11Gy、13Gyの線量で、ガンマ線(セシウム-137)を照射し、照射後1〜10日にわたって回復過程を観察した。また、マウス小腸上皮の放射線感受性は1日の間で大きい変動、つまり顕著なサーカディアンリズムを示した。最高値と最低値は4倍もの開きがあり、高感受性細胞の分離には最高値を示す午前9時ごろが最も適していることが判明した。さらに、昼夜の逆転した飼育条件下に移してからの変動パターンを追跡した結果、急性細胞死を示す高感受性細胞群はサーカディアンリズムに従って変動していること。これに対し比較的低感受性のクリプト形成細胞群は餌、光条件によって容易に変動することが判った。下半身に9Gyの照射を施したマウスにおいては、3〜4日目に幹細胞が盛んに分裂する。そこで、2.5〜4日目の36時間にわたり、1回に^3H-チミジンをマウス当たり15μCiの割合で、6時間おきに投与した。これにより、幹細胞DNAの新旧両鎖がラベルされたと考えられる。1、2、3および6ヶ月と長期間飼育した後、その小腸クリプトの組織接吻オートラジオグラフィーを作製しき、銀粒子の存在からDNA上に長期間ラベルが保持されていることを示した。小腸上皮クリプトを解剖顕微鏡下で分離する技術を用いて、液体シンチレーションカウンターによっても^3Hラベルの存在を確認した。マウス胸腺より細胞を分離し、ガンマ線や陽子線(プロトン)照射による細胞の生存率を調べた。また、照射後4時間の細胞浮遊液から遠心により細胞を集め、ホモゲナイズ、上清画分を脱塩・濃縮後、SDS PAGEにかけ、細胞死の出現に先立つ特徴的なタンパク質を電気泳動のバンドとして検出することを試みた。これについては詳細な解析を今後続けて行く。小腸上皮についてクリプト細胞の分離を行った。これにより、今後の生化学的手法の適用が容易となった。
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