研究課題/領域番号 |
62580166
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
放射線生物学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
重田 千晴 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (10034654)
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研究分担者 |
田中 公夫 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (70116622)
小熊 信夫 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助教授 (10034646)
鎌田 七男 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (00034629)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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キーワード | ヒトLD50線量 / 乳ガン / 原爆被爆者 / 染色体異常 |
研究概要 |
ヒトのLD50を推定することを目的として、原爆爆心地より550m地点にある広島中央電話局で破爆した90名の集団を用いて検討を行った。被爆線量については、T65Dおよび新線量体系DS86を用いた。種々の記録を基に調査を行ったところ、対象集団は被爆時年齢14-15才の女学生であり1946年現在90名のうち31名翌日死亡、29名2カ月以内死亡、30名生存していた。翌日死亡を除いた59名中、53名は2階で、6名は1階で被爆し、死亡率はそれぞれ50.9%(27/53)、33.7%(2/6)であった。以上のことより、ヒトLD50線量の推定に最も適した集団として追跡調査、細胞遺伝学的解析を行った。生存者30名中、染色体分析を行い得た9名のうち7名は2階で、2名は1階でそれぞれ被爆した人であった。既にT65Dに基づいて報告した被爆線量と染色体異常率との線量反応関係より、彼女らの推定被爆線量は7名が平均6Gy(2-7Gy)、2名が1.5Gyとなった。これをDS86線量に基づいて計算し直すとヒトLD50被爆線量は4Gyと推定された。この値は、DS86で見直された中央電話局ビルの被爆線量ともよく一致していた。また、30名の追跡調査の結果、身体的影響として、行方不明1名を除いて、大腸癌1名、乳ガン6名、乳腺腫1名が認められ、乳腺腫傷の発生は7名となった。このグル-プにおける乳腺腫傷の発生頻度は、放射線影響研究所の持つ非被爆固定集団における発生頻度と比較すると相対危険率は23.1倍(95%信頼限界12.5-42.2)と非常に高いことが明らかとなった。その他の疾患としては、子宮筋腫8例、良性縦隔洞腫1例、胃ポリ-プ2例、甲状腺機能障害2例、白内障1例であり重複症例も多く認められた。ヒトLD50の推定は動物のそれに比べて非常に難しい。今回われわれの行った原爆被爆者によるLD50の推定は4Gyと推定され、ヒトLD50としてはやや高値を示しているが、思春期(14-15才)の女性という特定集団の値として価値があるものと思われる。
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