研究概要 |
光音響分光法は今まで主として物質の表面の熱的性質を研究するため, 光(主として可視光)を使って行なわれてきた. この光を放射線に変え, 物質内へより深く入り込ませ, そこで吸収させて発生した熱を光音響法で検出する研究を進めている. この方法が物質の研究だけでなく, 発熱量の検出器として使うことができれば, 新しい考え方のすぐれた性質を持つ放射線の吸収線量計が実現すると考えられる. 今回の科学研究費で, (1)光音響セル, (2)プリアンプ2台(100倍, 500倍(可変)), (3)チョッパー(周波数可変)を製作した. また(4)ロックインアンプ, (5)パーソナルコンピュータを購入した. (1), (2), (4)で光音響信号を検出, 増幅, 特定周波数の解析をし, インターフェイスを通して(5)のパーソナルコンピュータで解析するプログラムを作製した. 以上の全システムの製作は, 今年度ですべて完了した. すでに放射光X線オヨビサイクロトロン陽子線で検出が可能なことを確かめており, 新たに製作したシステムで, 次の段階の研究を進めた. (1)各種の金属で異なった厚さ(1〜1000μm)のターゲットを使い信号強度の変化を調べた. (2)チョッパーの周波数依存性を調べた. (3)放射線強度と信号強度の比例関係を調べた. (4)金属の粉末試料と, (5)有機物試料を試みたなどである. (1)-(4)の実験では, 十分な信号強度が得られ, X線と信号それぞれの強度の良い比例関係があることが分かった. これらはドシメータとしての, 基本的な要素が備わっていることを示す. (5)の有機物試料については, マイラー膜, リン酸などについて試したが検出は可能だが, 信号強度は十分とはいえなかった. 結論として金属のターゲットであれば吸収線量計として使えそうだということが分かった. (5)の有機物試料の検出も重要なので感度を上げる努力をしている. また光音響信号についてプリアンプ信号を直接コンピュータに取り込み解析し, 今までの実験の詳しい検討を行う準備を進めている.
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