(1) 最大入射角が5°、13°、20°の円錐形の鉛コリメータで、出口の直径が0.15mmから4mmのものを10種類作成し、散乱線を含んだX線スペクトルを効率よく測定できるようにした。 (2) X線管焦点・検出器間距離を2m、被写体を20cmのアクリルとして、パラメータとして、最大入射角を(1)の3種類、照射野の直径を、2cm、30cmの2種類、被写体・検出器間距離を1cm、8cm、20cm、50cmの4種類を選び、これらの組み合わせについて、光子数スペクトルを測定した。 (3) (2)で求めたスペクトルから直接線だけのスペクトルを引いて、散乱線だけのスペクトルを求めた。光子数スペクトルをエネルギースペクトルに換算して平均エネルギーを求め、さらに照射量スペクトルに換算して、照射線量と散乱線含有率を求めた。 (4) 上記の実験と同じ配置について、モンテカルロ法を用いた計算機をシミューレーションで、光子数スペトクルから散乱線含有率迄を求めた。 (5) 以上の結果、散乱線含有率は、照射野の直径が30cmの方が2cmよりも高く、グレーデル効果は顕著でないことを定量的に確かめた。 (6) 照射野30cmには、幾つかの直径のビームストッパーを使って、散乱線の角度依存性を調べた。その結果、散乱角が大きくなる程、コンプトン効果のために散乱線の線質が軟かくなり、線量が減少することを確かめた。 (7) X線写真撮影系の性能を評価する尺度として、我々が前に提案した情報スペクトルを、散乱線を含む場合と被写体が動く場合に拡張した。 (8) 散乱線はコントラストを下げるので画質には有害であるが、平均濃度を上げるので被曝線量を減少させる効果がある。この両者のかね合いについて今後検討する必要があることを見出した。
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