(1)純Ge結晶の入射位置特性と斜入射特性を測定した結果、結晶の直径10mmのうち、内部の7mmの範囲に20°以内に入射した場合には、結晶中心に垂直入射した場合と比べて5%の誤差範囲でスペクトルを測定できることを確かめた。 (2)X線管焦点・検出器間距離を2m、被写体を20cmのアクリルとしてパラメータとして、最大入射角、照射野の直径、被写体・検出器間距離の組み合わせを広範囲に変えて、光子数スペクトルを測定した。 (3)(2)で求めたスペクトルから直接線だけのスペクトルを引いて、散乱線だけのスペクトルを求めた。光子数スペクトルをエネルギースペクトルに換算して、照射線量と散乱線含有率を求めた。 (4)上記の実験と同じ配置について、モンテカルロ法を用いた計算機をシミュレーションで、光子数スポクトルから散乱線含有率までを求めた。 (5)以上の結果、散乱線含有率は、照射野の直径が30cmの方が2cmよりも高く、グレーデル効果は顕著でないことを定量的に確かめた。 (6)照射野30cmには、幾つかの直径のビームストッパーを使って、散乱線の角度依存性を調べた。その結果、散乱角が大きくなる程、コンプトン効果のために散乱線の線質が軟かくなり、線量が減少することを確かめた。 (7)X線写真撮影系の性能を評価する尺度として、我々が前に提案した情報スペクトルを、散乱線を含む場合と被写体が動く場合に拡張した。 (8)散乱線はコントラストを下げるので画質には有害であるが、平均濃度を上げるので被曝線量を減少させる効果がある。この両者のかね合いについて今後検討する必要があることを見出した。
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