研究概要 |
本研究の目的は, 関東東北部における湿地や台地や火山斜面や砂丘上, いわゆる経済的限界地に立地する集落の実態を把握し, その後の変容過程にみられる地域性と一般性を摘出することである. 限界地を明確に定義し, すべての限界地立地集落を把握することは困難なので, ここでは比較的系統的に把握しやすい近世期の新田集落などいくつかを取りあげ, その代表的形態とみなして研究を進める. 昭和62年度においては, まず石井を中心に限界地立地集落の実態把握に努めてきた. その結果, 茨城県の近世期の新田集落については「新編常陸国誌」によってかなり網羅的に把握でき, 第2次世界大戦後の緊急開拓事業による開墾集落については農地局の「開拓組合別建設, 入植営農状況」(昭和33年8月発行)によって東京農地局管内の開墾集落がほぼ完全に把握できることが判明した. 現在,その集計と図化作業を進めつつある. ただし, 士族授産事業による開墾集落は, 事業そのものの存在については各県史などで明瞭であるが, この事業の景観形成力は弱く, この事業による開墾集落の系統的把握は難しいことがわかった. 一方, 各研究分担者は, 与えられた分担テーマに関して, 個別の限界地立地集落とその変容に関する実態調査を進めてきた. その結果, 「限界地立地集落は当初, 自然基盤に由来する弱点を有してしたが, その後, 時代の変化とともに大規模土地所有という条件や, 農業の低生産を補うため比較的早く導入した商業的要素をさらに発展させて著しく近代化してきた」というわれわれの仮説が一部では裏づけられたが, 逆に当初の弱点を克服できない集落も存在することがわかった, その差異は交通, 周辺地域との関係, その地域の伝統など, さまざまな要因と結びついていることが明らかで, その解明と成果の取りまとめが63年度の課題である.
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