研究概要 |
1.現代の大都市圏の構造変化を検討するための基本的視点を次の4点とした. (1) 従来一括して論じられてきた都市圏の郊外は, すでに成熟段階に入った. インナーサバブと, なお成長をとげつつあるアウクーサバブに二分できるのではないか. (2) 住・工・商業の個別機能に特化した単機能的郊外が, 機能的複合化と自立化の方向をたどりつつあるのではないか. (3) 郊外化の進展によって衰退化していた中心都市(カントラルシティ)が, "世界都市化"やジェントリフィケーションによって再生しつつあるのではないか. (4) 中心都市の再生が事実だとすれば, それによってインテーシティ問題や"二都問題"は解消されつつあるといえるのか. 2.上述の視点から内外の主要な都市圏を比較分析した結果, 次の見通しを得た. (1) ニューヨークに都市圏ではインナーサバブとアウターサバブのコントラストが明瞭である. 機能的複合化とは十分に進展していないが, 中心都市からの独立性は強まっている. 中心都市の再生は顕著であるが, 同時に二都問題が深化している. (2) ロンドン大都市圏では郊外の二重性がニューヨーク大都市圏ほどに明瞭でない. しかし郊外の機能的複合化は顕著で, 職住近接的で自立性は強い. 中心都市の再生も進んでおり, 多極化をねらった再開発によって二都問題の解消を目指している. (3) わが国の三大都市圏の場合, 郊外の二重性は大阪圏において最も明瞭である. 郊外機能の複合化は東京圏と大阪圏で進みつつある. 中心都市の再生は特に東京圏において顕著であり, かつ多心的構造の強化を通じて二都問題は最小限に保たれているが, 大阪の二都問題は深化している. (4) 発展途上国の大都市圏郊外は, 二重性も独立性も未だ小さく, 成熟化以前の段階にあるが, 英国の都市計画の影響を受けたクアラルンプールの場合には, やや先進国型に近い構造を示している.
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