最終年度に当たるので、これまでの補足的調査と、最終のまとめ的調査と研究を実施した。 1.本年度は考古学的発掘調査による古代道および推定駅家遺跡の検出が相次ぎ、古代道の規模と構造がかなり明確になった。これらの一部は我々が想定していたものが発掘によって確認されたものもあり、本研究の方法が適当であることを証明したが、また従来は全く考えられていなかった所もあって、文献に無い古代道の研究には歴史地理学と考古学との共同研究が重要な意味をもつことを示した。発掘成果を利用して奈良時代の上野・武蔵両国の東山道駅路、大宰府周辺の駅路について検討した。また、佐賀県吉野ヶ里では弥生遺跡と共に奈良・平安時代の遺跡についても再検討の機会が生じたので、佐賀平野の官道の再調査を実施して若干の新知見をえた。 2.春休み期間中に東海道・南海道(土佐国を除く)の全路線、夏休み中に東山道(上野国以西)の通し調査を実施し、それぞれ一部の路線と数駅について新たな想定をし、また駅家の立地や駅路通過地の地形・水利など自然的条件に付いての理解を深めた。その他、大和・河内・摂津・伊賀・甲斐・伊豆・上総・下総・常陸・下野・越中・紀伊・越後・筑前・筑後・豊前・肥前・肥後などの古道について部分的調査を行なった。なお、現地調査は実施できなかったが、資料により陸奥・出羽・近江(北陸道)・伯耆の一部駅路の推定を行なった。 3.8月24・5両日に上田市で開催された「第2回東山道サミット」に、本研究代表者は助言者として参加し総括を行なった。またNHK大分放送局は西海道の古代道についてのシンポジウムを1990年中に開催する予定で、これに関して相談を受け協力することにした。関東でも相次ぐ古代道の発掘によって、文化財担当者から広く意見を交換出来る機会が要望されているので、シンポジウムを開くべく検討中である。
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