研究概要 |
本研究はこれまでまとまった研究の少ない, 東アジアの大気の鉛直構造(大気の成層状態)の気団気候学的な解明を窮局の目的としている. 本年度は初年度であるため, 資料の収集と整理に重点をおき, 若干の解析結果を得て, 現在のところ主要部分は解析が進行中である. これまでに収集した主な資料は, 北海道・関東・中部・近畿・中国・四国の各気象官署の高層気象, 気象庁が手がけた大気環境調査のうち, 西瀬戸・むつ小川原・秋田湾・南関東各地域の気象特別観測資料・気象研究所の鉄塔およびライダー観測資料, 水理実験センター(筑波大学)の鉄塔観測資料である. これらに加えて東アジアの周辺地域の高層気象観測資料を整備した. 本年度これまでに判明した主要な点は次のとおりである. (1)大気境界層内に出現する接地逆転層をはじめ各種の逆転層・混合層の出現高度や頻度分布には, その地域をおおう気団の特性を反映して, 特徴のある季節性と地域性が見られる. (2)とくに海陸風と関係した逆転層と夜間の接地逆転に特色が見られる. (3)冬季にシベリア気団に支配されるときは, 季節風の吹き出しから吹き終りまでの過程で, 接地逆転層の生成消滅, 対流混合層の発達, 換気ドームの構造と関係する逆転層などの系統的な存在が明らかになった. (4)季節風の衰弱期や春・秋の移動性高気圧の後面や高圧帯に見られる沈降逆転層の分布に特色のある地域性が見られる.
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