本研究の目的は、これまでまとまった研究が少ない、東アジアの大気の成層状態(鉛直構造)の気候学的とりまとめを行うことである。本年度は第2年度にあたるので、前年度未収集の資料を入手するとともに研究実施計画にしたがって解析を行いその結果をとりまとめた。 内容は主として気象官署の高層気象観測資料の解析と、レーザー・レーダー等の観測資料を用いた研究の二つに大別される。前者については年度繰り近い時期に予期しなかった厖大な資料が入手できたことなどのため最終的な論文は、その資料の解析結果を含めてとりまとめたい。しかし、予定した資料に基く解析結果は次のとおりである。 (1)東アジア地域の逆転層の出現度数分布(高度分布)型を、クラスター分析で分類し、地域区分を行った。 (2)これとは別に、日本国内の高層気象観測を行っている20地点を対象にして、逆転層の出現高度のほかに、その厚さや強度の情報も加味してクラスター分析を行い、日本全域を6地域区区分することができた。 (3)大気候内に見た(1)の結果は、(2)の大区分とよく合致する。北日本・中央日本・南日本(南西諸島)がそれで、中央日本が、東北地方型、西日本型・内陸型・その他に組分される。 (4)気団との対応は、初年度に述べた結果が、より詳しく正確に確認され特色のある地域性が見られる。 (5)レーザーレーダーはエアロゾルの鉛直分布の観測手段として有力である。本研究では、春先中国から飛来する黄砂をトレーサーとして大気成層状態を調べた。また、数値シミュレーションにより、黄砂の3次元的な輸送過程を解明した。その結果、大規模な移動性高気圧に伴う逆転層の存在と構造が明らかになった。また黄砂は大気成層状態を知る上で極めて有力なトレーサーである。
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