研究概要 |
本年度は二年度にわたって実施した本研究の最終年度であり、計画に従って琉球列島中部の沖縄島と奄美大島・沖永良部の東海岸を中心に補足的な現地調査を実施するとともに、研究のまとめを行った。 現地調査前の空中写真判読による津波石の分布予測でもある程度判っていたように、これらの島嶼にあっては、宮古・八重山列島において分布が明らかな巨大な津波石などの顕著な津波堆積物は現地調査でもほとんど認められなかった。喜界島の完新世離水サンゴ礁よりなる段丘面上に分布するサンゴ岩塊は、背後の山地から崩落した更新世のサンゴ石灰岩よりなっていることが判った。奄美大島北西岸では、リーフフラット上に津波堆積物と推定される完新世サンゴ化石よりなる岩塊が数個分布しており、これらの年代について^<14>C年代測定を実施中である。いずれにせよ、琉球海溝に面するこれらの島々では、過去に大津波はあったが、その規模や頻度は宮古・八重山列島に比較し小さく、それらの特徴を津波堆積物の分析から明らかにすることは困難と思われる。 一方、昭和62年度の現地調査によって宮古・八重山列島において採取された津波堆積物の^<14>C年代を行い、過去の津波の特徴を示す貴重な資料を得ることができた。これらの結果と、古文書、考古学的資料、言い伝えなどを合わせ検討し、明和8年(1771年)の大津波の陸上への打ち上げ高を復元した。また、この津波以前にも、15世紀の中頃宮古島・下地島や多良間島を中心に大津波が襲来した可能性が強いことが明らかとなった。それ以前の津波についても、津波堆積物の年代とそれらの分布から、約1,000年前、2,000年前、2,400年前、4,400年前に、波源域の位置と規模を異にする津波が発生したと推定した。このような宮古・八重山列島周辺での大津波の多発は、本地域が、琉球海溝と沖縄トラフとの間にはさまれた地殻変動の活発な地域であることと関連があると推定された。
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