研究概要 |
本研究は、歴史記録などが残存しないと復元が困難な過去の大津波の特徴について、その襲来時期と範囲を中心に、サンゴ礁地域に特有な豊富な年代試料(津波堆積物)の分析に基づいて検討しようとするものであり、二年間にわたる調査研究によって所期の目的をほぼ達することができた。 研究対象地域として、まず、明和8年(1771年)に大津波によって多大の被害を出したと記録される琉球列島南部の宮古・八重山列島を選定し、現地調査を実施するとともに、古文書、言い伝え、考古学的発掘記録等の検討も行って、明和津波の打ち上げ高の復元を行った。この結果、古文書「大波之時各村之形行書」に記載された波高は、ほぼ正確であったが、石垣島南部における局地的な異常に高い数値については、さらに検討する余地があることが判明した。この結果、津波石と称される完新世サンゴ化石よりなる岩塊の多くは、明和津波以前に陸上に打ち上げられたものであることが判った。これらの津波石の^<14>C年代とそれぞれの年代に属する津波石の分布から、それ以前の津波の襲来時期とその範囲を求め、津波の再来周期を推定した。宮古島・下地島と多良間島を中心に約500yr.B.P.の年代を示す津波石が数多く分布し、下地島に伝わる明和津波以前に津波によって消滅した集落などの存在から、15世紀中頃に調査地域の東半に波源を持つ大津波の発生が推定された。これ以前の大津波も津波堆積物の^<14>C年代の集中から、約1,000年前、約1,900年前、約2,400年前と約4,400年前に推定され、このうち約1,900年前の津波が最大のもので、多くの津波石が石垣島ではこの時期に打ち上げられた。したがって、約2,400年前以降、明和津波かそれ以上の規模の津波が、300年〜900年の周期でくり返し発生したと推定された。
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