研究概要 |
本年度の主な調査対象は次の3つの活断層である. すなわち, 根尾谷断層・阿寺断層・中央線活断層系(四国)で行った発掘調査地点の周辺である. 濃尾断層系の根尾谷断層中央部において, 1891年の濃尾地震の変位量を詳しく測量し, その時の上下及び左ずれ変位量を解明した. 根尾谷断層は根尾川が形成した低位段丘面(〜堆積物)を変位させている. この面を覆う小扇状面(〜支流型礫層)が堆積し, 小川谷によって開折を受けてから3回の変位が認められる. 根尾村神所〜中にかけて分布する低位段丘面の本流型礫層の真上に粘土層がみられ, その中に含まれていた本片の^<14>C年代は14470±200であった. 急流河川である根尾川に沿ってかなり厚い粘土層が堆積することは普通では考えられない. この下流側で大地震時に崩壊が起こり, 湖沼状態となった可能性が大きい. 根尾村水鳥では低位段丘面は3回の, その本流型礫層は4回の上下変位を受けている. 本流型礫層の堆積年代は判らないが, 上記の年代よりやや古い程度であろう. その堆積時に変位を受けたことも考えられるが, 真上の粘土層直前の可能性の方が高い. これらの事柄を考慮すると, 根尾谷断層の活動間隔は短くみて, 3700年程度であるが, 長く見積っても6000年程度となる. 変位量と年代との関係から, 断層中央部での平均変化速度はA級下位と判った. 同断層系の梅原断層で行なったトレンチ調査ではもっと長い間隔が得られたので, これらの断層系はいつも同時に動くのでは無いらしいことも判明した. 阿寺断層系萩原断層の三ツ石地区調査では, 調査後の検討を加えて成果を公表した. さらに各種の資料を整理して, 詳しい論文を書くよう準備中である. 中央構造線断層系岡村断層の飯岡地区調査では資料整理を終え, 成果を投稿中である. さらに詳しい調査をここで今夏行なうことになり, その打ち合せをし, 周辺の調査を行った.
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