阿寺断層は左ずれの卓越した主要活断層であり、幾つものトレンチ調査が行われてきた。これらの調査結果を比較すると、各トレンチはいずれも同じような活動間隔を持つことからみて、主断層は大地震を起こしていちどきに全線が動くことが明らかにされた。この断層はかなり複雑な断層パタ-ンをもつので、詳しい断層線の位置や断層の分類を空中写真の判読から2万5千分の1地形図に表現した。 主要活断層の発掘調査は各々の断層運動の時期と少なくとも最近数千年の活動間隔を解明することを主に目指している。最新の先史時代の活動時期が将来の地震災害を予測する上でとくに重要である。したがって、地層や地震発生時期を決定するために、^<14>C年代測定や考古学的な手法を駆使した。こうした調査から、活動時期、活動間隔、地下の断層構造や断層運動の挙動が解明された。それらは、山崎断層・跡津川断層・糸魚川ー静岡構造線(中央部)・中央構造線(岡村断層)・阿寺断層などであり、調査成果を整理・検討し、「活断層研究」や「地学雑誌」に論文として公表した。 鈴鹿山脈の東麓を南北に走る一志断層系は西から東へ突き上げた逆断層として有名である。この断層系に属する活断層の露頭が最近の工事で数ケ所で現れたので、詳しい現地調査を実施し、活動性・変位様式・変位速度などについて考察した。さらに、こうした逆断層に伴う上盤の断層変形の形成過程についても解明した。 九州の中央構造線や活断層に関しては、東京大学出版会から「九州の活構造」を刊行した。5万分の1地形図を基図として、それに活断層のみならず、地形面・地すべり・火山などの分類を行った。これによって、九州の活断層の実体がきわめて詳しく判明した。
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