研究概要 |
1.喜界島の石灰岩地域 喜界島の隆起サンゴ礁地域の段丘は太平洋に急上昇している. 農業的土地利用はさとうきびが広域をしめ, 1970年以来基盤整備事業による土地改変域が拡大しつつある. 段丘面が傾斜大であるにもかかわらず, 一筆3反とし, 土壌深40cmを保つため容土をした. 年降水量は2000mm以上で, 土壌深の極端に浅い地域は狭かった. 土地改良後, 畑周辺の原植生域が狭少になり, 海へ畑から土壌が流出している. またドリーネやすい込み穴を埋め平坦化したため. 地下水系への土砂の流入, 肥料, 農薬も流入しているようである. 海域では水ウナギ, エバ, カニ等の生息が激減し, 魚の産卵の為の礁内の海草も減少し, 生態系に影響が出ている. 土壌と共に肥料も流出し, 土地改良後の肥料投与量は2倍になり, 海域を含め, 自然環境を改悪しているようだ. 2.南大東島の石灰岩地域 この島は全域隆起サンゴ礁で, 土壌生成年代も古く, 南西諸島では例外的に石灰岩地域の土壌が厚く良く発達している. しかし年降水量1700mmと少なく, 干ばつ発生率は高い. 島中央の低地には約80の池沼があり, この水が飲用, 農業用に利用されている. 反面この池沼に生活排水が流入するので汚染が近年いちぢるしい. 干ばつ年に灌漑用として用いると淡水レンズの塩分濃度が濃くなる基盤整備事業による土地改良事業では, 整地し, ドリーネやすい込み穴を埋め, 畑の大区画, 平坦化を行った. 雨後, 土壌は原地形に従って流入し, 地形に反した平坦化は成功していない. また1972年から労働力不足により大型機械を導入したことは石灰岩田林の重粘質な赤色土の粘性を増すことになり, 心土は緻密になり, さとうきびの有効土壌深は40〜60cmと減少している. 干ばつ年には大型機械導入前より反当収量が減少している. 将来この傾向は強張されるであろう.
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