今年度の研究対象地域である沖繩本島、石垣島、波照間島の現地調査から、次の結果を得た。石垣島では島南部の宮良川流域を中心に大規模な土地改良事業が、かんがい整備事業とともに進行しており、土地改良の完了した地区ではスプリンクラーの設置が多く観察できた。この島の水資源(水源)は大半を地表水に依存しており、現在建設中の大規模農業用水貯水池の完成が期待される。しかし、現状は十分な水源確保に乏しい上、水利用の合理的な方法にも疑問が認められる。また、土地改良事業の完了した地区からの土壌流出は顕著であり、地表の土地利用の変化とともにサトウキビ畑での化学肥料の投入量の増加と相まって、地表水、地下水ならびに沿岸海域の水質に少なからず影響を示しつつある。 波照間島でも基盤整備、圃場整備事業によって、大規模な地表改変が進行中であり、耕地面積、作付面積の拡大もはかられている。この島は土地改良事業のみが先行し、かんがい整備はほとんど計画されていない状況にある。島での水源は全て地下水であるが、過剰揚水をおこなうと、農業および水道用水の大半が高塩分濃度となる。島の現状からみて水源確保が重要課題の一つと考えられる。また、土地改良事業の一環として、土壌流出を防止・軽減するための沈砂池が各所に設置された対策方法が講じられている。しかし、改良工事期間中に土砂の流出が顕著に認められる。沖繩本島においては、事業をはじめとする地域経済の不振を打開するために大規模な土木工事が実施されている。その工事による赤土が海域を汚染し、総じて水文環境全般に悪影響を与えているのが現状である。このように水文環境の現状ならびに土地改良に伴なう水文環境への影響などが把握できたが、なかでも農耕地での大量の化学肥料の投入や市街地区からの雑排水の問題は、水文系全般のみならず生態系の環境にも悪影響を与えつつあるため、将来の水資源の水質悪化が懸念される。
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