本研究の目的は、南西諸島の隆起サンゴ礁から成る石灰岩地域で実施されている大規模な土地改変が地形・水文・農業・生態系などにおよぼす影響を、また沖縄以北と以南では干ばつ発生率と程度に差異があるため、土地改変事業がその後のサトウキビ収量や水文系などにどのような地域差としてあらわれているかを明らかにする。 研究対象地域は、喜界島・石垣島・波照間島・南大東島である。 3年間にわたる研究成果の概要を要約すると、次の通りである。 (1)沖縄以北の喜界島では干ばつ程度は小さく、水資源的にも豊富であるが、土地改良事業の効果はサトウキビの収量増加などに充分あらわれていない。この島における土地改良化は土壌とあわせて肥料の流失を起こしているため、地下水系の水質に影響しつつある。 (2)沖縄以南では干ばつ程度と頻度は大きいが、石垣島のように充分なかんがいをおこない得るような水資源を有する地域では、土地改良事業は一応の成果をあげている。しかし波照間島や南大東島では、その効果は小さいことが把握できる。 (3)石垣島の水源は大半を地表水に依存しており、現在建設中の農業用貯水池の完成が期待される。しかし現状の水利用方法には若干の疑問が認められ、今後は渇水対策を含め有効的な水利用計画が重要となろう。 (4)波照間島では土地改変に伴い耕地面積・作付面積の拡大がはかられている。この島は土地改良事業のみが先行し、かんがい設備はほとんど計画されていない。水源は全て地下水であるが、過剰揚水を行うと農業・水道用水の大半が高塩分濃度になる。水源確保は重要である。 (5)南大東島は水量的には恵まれながら、水質的には生活用・かんがい用水に供せられるに乏しい特徴をもっている。 (6)土壌流失が土地改良工事の過程で発生している。
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