T4ファージの収縮生尾鞘蛋白質(gp18)の高次構造と収縮に伴う構造変化について調べるこめに、1.チロシンおよびシスティンの化学修飾、 2.プロテアーゼ限定水解、 3.イムノブロッティング、 4.免疫電子顕微鏡観察および 5.緑膿菌ファージPS17の収縮性尾鞘蛋白質の一次構造の決定を行なった。1.ではテトラニトロメタン(TNM)によって、31個の全チロシン残基のうち、単量体および未収縮時には特定の10ないし11のチロシン残基が修飾され、収縮に伴ってそのうち、3残基(Tyr254、270、455)以外は著しく修飾されにくくなることが分かった。未収縮の尾鞘ではサブユニット間に、収縮した尾鞘の場合に較べて大きな空隙があるものと考えられる。またシステインに特異的な修飾試薬ABD-Fによっ5残基のシステインのうち、Cys402と406の2残基がS-S結合の形成に関与しており、SH基を持つ残り3残基のうち、少なくもと1つはgp18分子の集合状態にかかわらず修飾されることが分かった。2.ではgp18のプロテアーゼ抵抗性領域が、トリプシンの場合Ala82-Lys316であって、キモトリプシン、サーモライシンの場合も同様な領域であること、さらに、3.によって、トリプシンはC末端側からgp18を切断して行くことも分かった。また、4.によって、トリプシン抵抗性領域に対する抗体がフアージの尾鞘に結合することが明らかとなり、5.の結果を加味すると、残基番号250-410付近がAmos & Klugによる電子顕微鏡画像からの再構成三次元像にみられる尾鞘の外側につきでた部分を構成すると推定される。5.では385残基からなるPS17ファージの尾鞘蛋白質の一次構造を、主として塩基配列から決定し、構造の一部を蛋白質の側から確認した。両尾鞘蛋白質の一次構造を比較した結果、相同性は比較的低いものの、PS17ファージ尾鞘蛋白質の対応するgp18の配列は、2カ所に分かれて存在することが分かった。
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