ヒトEGFレセプター遺伝子のプロモーター領域にある6組のピリミジン・クラスターのうち3組は各々Sp1結合配列と重複あるいは隣接している。また残り3組のうち1組はステム・ループ形成可能配列内に、他の2組はこれらの特殊な配列とは無関係に散在している。このプロモーター領域の下流にCAT遺伝子を結合したプラズミドpERCATと精製Sp1因子との結合に対する抗ピリミジン・クラスター抗体(5H4)の拮抗作用について調べた。5H4抗体は高分子のIgMであるので、反応にはそのFab分画を用いた。その結果、1.pERCATにSp1因子が結合していても隣接するピリミジン・クラスターに5H4のFab分画は結合した。2.PERCATのピリミジン・クラスターに5H4のFab分画が先に結合すると、後から加えたSp1因子は結合しなかった。これは昨年度の研究結果、5H4で処理したpERCATを鋳型とするin vitro転写系ではSp1因子を添加しても転写の促進効果が認められなかったことと合致している。5H4のFab分画によりSp1因子の結合個所がカバーされたためか、あるいはFab分画の結合によりその周辺の高次構造が変化したためにSp1因子が結合できなくなったのか現在検討中である。昨年度調製できなかった抗ZDNA抗体については、ブロム化ポリ(dG-dC)とN-アセトキシ-2-アセチルアミノフルオレン処理のポリ(dG-dC)に高い結合能を持つと同時に未処理のポリ(dG-dC)には10^<-2>以下の反応性しか示さない抗体を産生する細胞9株を樹立した。さらに化学合成したステム・ループDNAを抗原として、単鎖DNAならびに2重鎖DNAには反応しないがステム・ループDNAと反応する抗体を産生する細胞4株を樹立している。また化学合成のG-G-C-(A_5-N_5)_5-A_5-C-G-Gを抗原としてポリdA-ポリdTとは反応しないが抗原のDNA断片には高い結合能をもつ抗体の産生細胞8株を2回目のクローニングで得ている。
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