研究概要 |
バクテリオファージT3の尾部蛋白質について, アミノ酸配列の解析を行ない, α-ヘリックス3本縒りの超二次構造の可能性を予測した. またこれを実際に確認するために, 遺伝子組み替えによって大腸菌にこの蛋白質を発現させることを試み, 生物活性をもつ尾部蛋白質を得ることに成功した. 1.アミノ酸配列の解析・尾部蛋白質をファージから直接調製し, そのアミノ酸組成を決定してDNAの塩基配列から導かれた本蛋白質のアミノ酸配列から得られる組成と一致することを確認した. 配列解析の結果, 130番残基附近から270番残基附近にかけて7残基の繰り返しが示唆されたので, この領域をα-ヘリックスと仮定してそのパッキングを検討した. 他の証拠からこの蛋白質は三量体であることが判っているが, 上記の領域がアラニンを多く含むような疎水性残基を最も内側にするように3本のα-ヘリックスが縒り合わされ, 超二次構造を作ることによって安定な, 電子顕微鏡観察から得られている細い棒状構造を与えることが判明した. 2.大腸菌によるT3尾部蛋白質の発現と調製. ファージ尾部蛋白質遺伝子を発現プラスミドに組み込み, 大腸菌によって高能率で発現させることが出来た. 唯, この尾部蛋白質は本来大腸菌が作る蛋白質であるにもかゝわらず, 発現した蛋白質は封入体として変性状態でしか得られなかった. これを可溶化し, いろいろな條件下で尾部蛋白質を再生させることを試みた結果, 高希釈下での再生処理によって生物活性のある尾部蛋白質を得ることに成功した. 3.限定消化による1.で述べた部分の単離は今後の課題として残されており, 今後もその部分のα-ヘリックス会合による超二次構造の形成について考察を進める予定である.
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