研究概要 |
タンパク質の立体構造の単位として, 球状ドメインがよく知られている. 球状ドメインは, さらにコンパクトなサブ構造に分解できることを, 申請者は発見し, このサブ構造をモジュールと命名した. モジュールは, X線結晶解析により, 立体構造が分っているタンパク質について同定可能である. これまでは, 距離地図の方法により, モジュールの同定を行ってきた. しかし, 大きいタンパク質や, モジュール構成が複雑なタンパク質では, この方法には精度的な限界が存在する. この点を改良すべく, 新しいモジュール同定法を開発し, この方法を用いてタンパク質のモジュール同定とその視覚化を実行し, 当初の計画通りの成果を得た. 新しく開発された方法は, (1)求心性プロフィールと(2)伸長性プロフィールを用いる. これらはどちらも, 主鎖のα炭素の原子座標を使用しているが, 各々一定長のセグメントの中心又は拡がり度から, モジュールの境界の自動的な同定を可能なものとした. この方法により, X線結晶解析がなされている多くのタンパク質のモジュール同定が大巾に進んだ. モジュールの空間配置を表示するグラフィックス用ソフトを改良し, 高速化を実現した. これによって, パソコン上に, モジュール構造の空間充填モデルの表示が容易になった. 立体的なモジュール構成を, 2台のスライドプロジェクター使用によってスクリーンに表示することにより, トリオース隣酸イソメラーゼとアルコール脱水素酵素の各モジュールについて, その機能的役割を明らかにした. さらに, 2次構造とモジュール構造とに関連があることを見い出した. これらの成果は, 天然タンパク質におけるデザインの原理を明らかにした. 本研究で得られた結果は, 遺伝子工学の技術によって将来可能となる, 新しいタンパク質のデザインにおいて役に立つと考えられる.
|