フィトクロムは緑色植物に存在する色素蛋白質で、様々な赤ー近赤外光可逆的な生理反応の光受容体であり、近年光による遺伝子発現調節反応の光受容体としても注目されている。上記諸反応はフィトクロムが赤色光吸収型Prから近赤外光吸収型Pfrに光変換する事によって誘発されると考えられているが、その情報変換機構は未知である。そこで光情報変換の分子機構に関する知見を得るべく、シンクロトロン放射光を光源としたX線小角散乱法(SAXS)を用いてその高次構造の解析を行なった。SAXSの測定は、高エネルギー物理学研究所・放射光実験施設共同利用実験を申請(課題番号86ー106)して行なった。 62年度は見かけの分子量、慣性半径等の基礎的な分子構造パラメータの測定を行い、四次構造および分子形状の解析を目指しその結果を、日本植物生理学1987年年会(3月、浦和)および日本生物物理学会第25回年会(11月徳島)にて講演発表し、Biochim.Biophys.ActaおよびPhytochrome and Photoregulation in Plants(裏面参照)に出版発表した。 63年度はフィトクロムを酵素処理して得られるポリペプチドについても同様な測定を行ない、得られた結果を大型計算機を用いて解析し、分子内領域構造を含んだフィトクロムの分子構造の解明に成功した。得られた分子モデルを日本生物物理学会第26回年会(10月名古屋)で講演発表し、論文をFEBS Lettersに投稿し、受理された。更にコントラスト変調法を用いた測定を行ない分子内の電子密度分布に関する解析を行い、得られた結果を利用して先に提出したモデルの改良と精密化を行った。同結果はまとめて論文執筆中でBiochemistryへ提出予定である。
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