研究概要 |
本研究の目的は, 線虫(主としてC. エレガンス)の胚発生過程を, 16mm映画カメラ, あるいはTVカメラで撮影して, 時間的・空間的な連続映像として記録し, これより細胞の配位を決定することである. さらに, この基本情報より, 細胞分裂の様子や移動を定量的に解析することである. 本年度は, 16mmフイルムのコマ撮りでC. エレガンスの野性株の初期発生が記録されているものを解析するコンピュータシステムの開発に的を絞った. このシステムは, 16mm映像をデイジタ化化して, コンピュータ内に蓄積し, これを用いて細胞核の位置を対話式に計測して, 3次元的に再構成し, それを分子グラフィックスと類似した手法で, コンピューターで立体的に表現する機能を有する. このシステムは, 本年度以前にある程度試作されていたが, 本年度は全面的にプログラムを作成し直した. 主な改良点は, 細胞の核(の中心位置)だけでなく, 胚(卵)の外殻を計測できるようにしたこと, 細胞系譜や細胞名などの知識情報をコンピューターに記憶させておき, 計測者の利用に呈するようにしたことである. これによって, 細胞の位置は, 卵に固定された座標で表現することができるようになり, 解析の能率も大巾に向上した. またこのシステムを用いて, 2, 4, 6, ・・・, 51というように, 静止期にある胚における細胞配位を87細胞期まで計測した. ただ, これらの位置は, コンピューターの内部座標として得られたものであり, ミクロン(m)単位で, 卵に固定された3次元座標になっていないため, 修正が必要である. 次年度は, このような修正を行って, 2つの正常株に関する細胞配位データを最終的に決定する予定である. また16mmだけでなく, TVカメラによる撮影手法も開発する予定である.
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