昨年度までの中間報告書では主に中等教育段階に焦点を当てていたが、本年度はさらに初等、中等教育段階各々を含めた理科教師教育、特に理科教師養成の全般を対象にして分析した。先ず、日本の理科教師教育に関する近年の研究を生理総括した。その結果は日本の理科教育研究の諸学会の研究紀要等において、総合的、系統的な理科教師論研究がかなり不十分なことが判明した。次に、日本の今年度改正前の旧免許法下での全国54の4年制の国立の教員養成系大学・学部・分校における理科教師養成を総合的、且つ詳細に分析した。その結果多くの点が解明できたが、それらの中より一番顕著な実態のみに絞る。分校を含めると全国の教員養成系大学・学部数は49校となり、そのうち初等学校課程と中学校課程両者を有する49校を対象にした。これらでは、理科教育だけのスタッフ数は2人が30校、しかし、ゼロが4校、1人が7校もあった。近年、修士課程の大学院がこれらの20数大学に設立され、曲がりなりにも理科教育研究が進展しつつある状況に、学部段階とこれら大学院とのギャップは大きな問題である。なお、全国の教員養成系大学・学部における自然科学に関した教科専門科目のカリキュラムを整理した一覧表も作成した。他方、米国の理科教師養成に関する動向と現状および、米国の公立、私立221校での理科教師教育の実態については米国の理科教育研究者より、元資料の翻訳の了解が得られたので、それらの翻訳と部分的な解析を行った。これら、日米の実態調査の相互比較でこれまでに明らかになった多数の事より、結論としては、戦後米国を範としながら、日本は標準的な基準をベ-スにしながら多様性が見られ、他方、米国は各州により帰化教師の資格要件が多様であるが故に、諸学会からの標準勧告案が大きな影響を有する。従って、今後、理科教師教育に関するさらに深く広範囲で、総合的、系統的な日米比較研究が必要且つ重要である。
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