現代理科教育の成立過程を国際化較の立場から明らかにすることは、現代理科教育の成立根拠に関する客観的・根源的考察を可能にする。本研究は、ドイツにおける現代中等理科教育の成立過程を次のような視点から研究し、考察を加えたものである。 1.ドイツの中等学校の主流であったギムナジウムにおいて、自然科学が確固とした教科として認められるためには、その実用的な価値だけでなく自然科学固有のヒュ-マニズム的価値が明確にされなければならなかった。こうした問題に関する関係者達の見解や理論を彼らの論文などを通して明らかにした。 2.こうしたことを背景に、ドイツ自然科学者・医者協会は、1905年にアビトゥア受験生のための、1906年に6年制実科学校及び高等女学校の生徒のための、1907年に中等学校の自然科学教育担当の教員養成のための、自然科学教育に関する改革案を提示した。各々の報告書によって、各提案の内容を明らかにした。 関係者達が展開してきた一連の改革運動のねらいは、数学や自然科学を文学、言語、歴史などと同等の価値を持つ陶冶財として中等学校に位置づけることであった。その際、自然科学固有のヒュ-マニスム的陶冶価値は、自然科学的な探究の手続きの中にあるという見解に立っていた。つまり理論的に仮説を立て、それを実証するために観察や実験などを通して真理を見い出す手続きである。こうしたことから、自然科学教育では生徒実験が大変重視されるようになる。こうした理念に基づく運動は、やがて、各種中等学校における自然科学諸科目のカリキュラム、教授法及び実験室の整備へと発展していくことになった。
|