研究概要 |
この研究は, 児童・生徒の因果関係に関する理解(または誤解)の発達的変化を, 言語の理解と事象の認知という両面から調査し, 理解の困難点や, それにたいする援助の方法を明らかにして, 教育に役立つ知見を得ることをめざす. すなわち, (1)児童・生徒の因果関係の理解が, 考える内容(物理的, 心理的, 数学-論理的)や様態(演繹的, 経験的, 意図的)によってどのように変わるか, (2)因果を表す言語表現(「…だから〜」のような説明的表現と「…するためには〜」のような工作的表現の違い)の理解と産出は年齢的にどう変化するか, (3)因果関係の説明に関するメタ認知は年齢的にどう変化するか, などの点について, 実態を調査し, それにもとづいて因果関係の理解を援助するための方法を考えようとした. (1)理科の授業を観察し, 児童の因果判断の実態について調査した結果, (ア)大人の基準からいって「正しい」因果判断をするほかに, 誤っているが「もっともな」因果判断を豊富におこなっている, (イ)正しいということよりは, 誤ってはいてももっともな因果判断をおこなうことを奨励する教室では, 多様な因果判断が豊富にあらわれる, (正誤の評価が厳しくおこなわれる場合は, あてずっぽの答えをしたり, 因果関係にかんする陳述を「思い出す」構えをとりやすくなる), (ウ)「どうしてそうなるのか」というよりは, 「…のようにするためにはどうすればよいか」とか「なにがそうさせるのか」という「工作的発問」をあたえたほうが, 因果判断がおこなわれやすくなる, などのことがわかった. (2)実験報告文を読ませて, 因果判断をくだす際の論理性にたいする配慮についてしらべた. (3)M.Lドナルドソンを参考にして「内容」と「様態」の違いと「説明」との関係について調査した.
|