昨年度の研究結果によれば、以前からいわれていることかもしれないが、中学校では生徒主体で行われる観察・実験が少なく、そのためか、物質についての認識・理解の定着率が低いことが、改めてわかった。 本年度は、高校2年生を主体に、化学についての基礎的な調査研究を行い、その結果から得られた知見のいくつかについて以下に報告する。 高校2年生では、化学に興味をもつものは全体で21.1%(男女別では、男子24.8%、女子17.6%である)にすぎず、化学が嫌いだという28.8%が「好き」を上まわっている。残りは好きでも嫌いでもなく普通だということであるが、普通の子を好きにさせ、嫌いだと答えた子を、せめて「嫌いでない」とさせることが、高校における最初にして最大の課題になると考える。また、化学をもっと「好き」にさせるために、中学・高校がともに、できれば相携えて努力する必要があるのではと感じる。 今回改定された学習指導要領によれば、理科においては、中学・高校ともに生徒の主体的な探究活動や課題研究を通して化学の事物・現象について探究する能力と態度の育成を図るようになっている。そのことと考え合わせて、中学時代の学習内容の理解度を調査した結果(次表に示した)をみると、学年が進むにつれて「理解できた」が減少し、「理解できなかった」が増加する。その比率(理解できた/理解できなかった)の変化は、3/1、2/1、1/1となっている。中学3年生においては、全体の1/4の生徒が、化学を全く理解できていないまま高校へ入学してきていることになる。中・高の一貫教育を考える上でも、中学校におけるカリキュラムを考える上でも、重大な示唆を与えてくれるものと思う。(┣・HY・┫)
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