研究概要 |
海面上昇の実態とその長期傾向の推定については, 諸外国において研究されている長期的な気候変動の原因を総括し, 太陽活動の変化や二酸化炭素濃度の上昇に伴う長期的な気温の上昇やそれによる氷床の融解が長期的な海面上昇をもたらすことを示すとともに,わが国における絶対的な海面変動を明らかにDするため, 潮位および地盤の長期的な観測資料の解析から, 最近では数/年程度の経年的な海面上昇が考えられ, 将来予測される二酸化炭素の蓄積に伴う気温上昇を考慮すれば, 2100年には約4-4.5mも海面が上昇すると予測された, つぎに, 高潮による氾濫災害の予測では, 高潮の数値予知および極値統計の基本となる観測潮位の信頼性について, 詳細な検討を加えた, すなわち, 太平洋沿岸, とくに高潮の常襲地域である, 伊勢湾, 大阪湾, 紀伊水道及び土佐湾における高潮特性について, 関係のデータベースを構築し, 収集したデータに基づいて解析を行った結果, 従来発生機構が不明確であった高潮の前駆波は, 黒潮による1-5ヶ月の時間スケールを有する海面変動の一部が重畳される場合が多いことを示すことができた, さらに, 津波による氾濫災害の予測では, 大阪湾における津波の変動計算を実施し, 大阪における津波の高さが1,9mとなって, 史料解析の結果と一致することを明らかにし, それらの成果を総合して復元を行った. その計算過程で, 大阪湾では津波の周期が長くなると湾奥で増幅されることを見いだし, 従来の南海津波やチリ地震津波の痕跡高の沿岸方向の変化を説明できることがわかった. ついで, 大阪に来襲するもっとも危険な津波を求め, また, 海面上昇の一例として約6000年前の縄文海進を取り上げ, 海面が現在より約3m高くなった状態で, 安政南海津波クラスの巨大津波が来襲した場合の, 大阪平野における氾濫特性を考察した.
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